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ロケを支えた人々

ロケを支えた人々⑤

石巻市 渡波地区

ワタママ食堂

被災後の何もないところから、地域の皆と共に-。眼前に太平洋を望み、震災から9年を迎えた現在も更地や家の土台だけが残された場所も多い渡波(わたのは)に、2011年から歩み続ける小さな食堂がある。

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自らも被災者でありながら、避難所で炊き出しに尽力してきた地元のお母さんたちの気持ちを原動力に、食の拠点として地域に貢献するワタママ食堂。被災後も持ち前の明るさで食堂を再開し、地元で暮らす山田太郎の母、真理亜(黒木瞳)の姿が重なる。

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物語の後半、高校生で亡くなったサクラの思いがつなげられ、やがて二人の心を動かしていく。親友を思うサクラのあたたかく切ない気持ちが託されるその場面に、木のぬくもりが心地よいワタママ食堂はそっと寄り添う。2014年に生まれ変わったワタママ食堂の設計は、建築家の瀬野和弘氏が手掛けた。宮城県産の木材100%の木組みの食堂は、今も住宅が少ない土地でほっこりと来客を迎える。

ワタママ食堂を運営するNPO法人「ワタママスタイル」代表理事の菅野芳春さんは、本作には「震災で人生が変わっても、今も立ち上がり頑張っている人がいることを忘れないでほしい」というメッセージが込められていると感じている。撮影当日は総勢数十名のスタッフの駐車場や食事の手配など、市と協力しつつ自ら周辺住民に声をかけてまわり、一日がかりの撮影を見守った。過去にテレビ取材は経験していたが、映画制作にかかる手間と時間は想像をはるかに超えていたという。

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作中でも、震災は容赦なく人生を巻き込み、変えていく。「一人でも多くの方に、もう一度被災地に目を向けてもらえたら」と菅野さんは願う。撮影で使用された「山田食堂」の看板とのれんは今も大切に保管されており、記念撮影もできる。

映画との共通点を楽しみながら、どこかで「東北の今」に思いをはせてほしい。

(取材・文 山口史津)