ロケを支えた人々②
宮城県スポーツ協会
山田太郎(成田凌)が追い続けた、プロのサッカー選手になるという夢。本作では太郎の人生とともに、プレーヤーとして、あるいは指導者としてのサッカーのシーンが描かれる。
撮影地は、スポーツ場やライブ会場として宮城県民に親しまれている宮城県サッカー場「みやぎ生協めぐみ野サッカー場」だ。スポーツ施設ならではの事情もあったが、宮城に貢献したいという思いで職員が協力し、寒空の中撮影の実現に至った。
ロケ地候補の連絡から撮影まで、全体のコミュニケーションをまとめたのは施設管理課長の小松史嗣さん。使われるにあたって施設の古さを心配していたが、監督自ら入念に下見をし、「ロケ地として最適」と伝えられたことが決断の後押しになった。
天然芝2面、人工芝1面で構成されるサッカー場で押さえるべきは、多くの人が参加する大会日程と、天然芝のコンディションを保つための「養生期間」だ。サッカー場のスケジュールにはこの期間が含まれており、場所が空いていても、使用できるとは限らないのだ。
芝の管理を担当する根本さんは、良好なコンディションの維持を見越し、事前に制作スタッフに活用範囲を伝えたり、リハーサルと本番で異なる面を使えるようにしたりと工夫をこらした。プロの試合のような激しさはないものの、映画制作では機材の搬入など通常の試合にない要素も生じる。各所と連携しながら当日を迎え、夕方ボールが見えなくなるほど暗くなるまでの撮影を、問題なく行ってもらうことができた。
下見段階から映画を形作るための労力を目の当たりにし、職員は「数分の映像にこれだけの時間と人手がかかっているとは」と口をそろえる。同時に作品と、作品を通じた復興へのメッセージ発信に関われたことに、感慨深い表情だった。
宮城県サッカー場「みやぎ生協めぐみ野サッカー場」は、県民、利用者に広く開かれた施設。近隣住民の散歩コースにもなっており、誰でも立ち寄ることができる。大画面に映るその光景に、懐かしさを感じる方も多いのではないだろうか。
(取材・文 山口史津)